元気ですか〜!?
どうも、ろけねおです。
今回ご紹介いたします本は西加奈子さんの書かれた『きいろいゾウ』という映像化もされたことのある作品です。
きいろいゾウ
はじめに:この分厚い本に、ボクは恋をした
結論から言います。
『きいろいゾウ』、メチャクチャ面白かったです。
書店でこの本を見かけた時、正直「うわ、分厚い…」と圧倒されたのを覚えています。
読破するのは無理かもしれないな、なんて弱気な気持ちにさせるほどの迫力。
でも、多くの読者に長く愛されているのには、きっと何か理由があるはずだ。
そう思って、ボクは意を決してこの物語の扉を開きました。
するとどうでしょう。
読み始めたが最後、グイグイと物語に引き込まれ、本の分厚さなんてすっかり忘れてしまうほどのめり込んでしまったのです。
この記事では、ボクが『きいろいゾウ』を読んで何を感じ、何に心を揺さぶられたのかを、ネタバレなしでじっくり語っていきたいと思います。
『きいろいゾウ』ってどんな本?簡単なあらすじ
まずは、この物語の基本情報と、簡単なあらすじをご紹介します。
【著者】 西 加奈子
【出版社】 小学館文庫
物語の主人公は、背中にツキノワグマの毛が生えている売れない小説家の「ムコさん」と、ある秘密を抱え、動物や植物の声が聞こえる「ツマさん」。
二人はお互いを深く愛し合いながら、九州ののどかな田舎町で静かに暮らしています。
穏やかで、優しくて、どこか切ない。そんな二人の日常を中心に物語は進んでいきます。
しかし、物語が進むにつれて、それぞれが抱える過去の傷や秘密が少しずつ明らかになり、二人の関係は大きな試練に直面することに……。
生命力あふれる文章で、人間の光も闇も鮮やかに描き出す西加奈子さん。
その真骨頂ともいえる、愛と赦し、そして「生きること」そのものを問う、深遠な物語です。
結婚の「かゆいところ」に手が届く、不思議な心地よさ
この物語を読んで、ボクは自身の「結婚」について深く考えさせられました。
実はボク、友人と結婚について話す時、いつも少しだけ輪から外れていました。
既婚者の友人が未婚の友人へ「そろそろ結婚しないとね」なんてお説教を始めると、ボクは決まってこう言うんです。
「自分が結婚しておきながら言うのも変ですけど、結婚はしてもしなくても、どっちでもいいと思いますよ」と。
これがボクの本心でした。
子供がいないことも影響しているかもしれませんが、婚姻届を出したからといって、何かが劇的に変わったという実感がなかったのです。
でも、『きいろいゾウ』を読んでハッとしました。
ボクは、自分でも気づかないうちに「結婚の妙味」とでも言うべきものを、しっかり味わっていたのかもしれない、と。
物語の主人公、ムコさんとツマさん。
二人の会話、距離感、そして二人の間に流れる独特の空気感は、恋人同士とは明らかに違う、夫婦ならではのものだと感じました。
具体的に「これだ!」と言葉で説明するのは難しいのですが、夫婦だからこそ分かり合える何か、言葉にしなくても通じ合う何か。
その「何か」が、この物語にはあふれていて、まるで自分の心の「かゆいところ」にそっと手が届くような、そんな心地よさをずっと感じていたのです。
ボクが「結婚しても何も変わらない」と思っていたのは、心のどこかで「結婚したら何かが劇的に変わるはずだ」と過剰に期待していたからかもしれません。
本当は、恋人から夫婦へと、ゆっくり時間をかけて関係性がシフトしていたのに、その繊細な変化に全く気づいていなかったのです。
ムコさんとツマさんの姿を通して、ボクは今の自分がパートナーと「夫婦」という一つのチームを築き上げてきたことに、ようやく気がつきました。
法律上は紙一枚で夫婦になりますが、心が夫婦になるには時間が必要です。
「振り向けば、いつの間にか夫婦になっていた」というのが、一番しっくりくる表現かもしれません。
そして、その事実に気づいた時、心の底から「ああ、結婚して良かったな」という温かい気持ちが込み上げてきました。
何が良かったのか、やっぱりうまく言葉にはできないんですけどね。
不便だけど愛おしい。「田舎暮らし」への憧れ
物語の舞台は、美しい自然に囲まれた田舎町です。
正直に言うと、ボクはこれまで田舎暮らしに全く興味がありませんでした。
むしろ、年を取ったら便利な都会で暮らしたいと考える「都会派」です。
生まれてからずっと、都会でも田舎でもない中途半端な場所で暮らしてきたので、本当の田舎の良さも厳しさも知りませんでした。
でも、この物語を読んで、その考えが少し変わりました。
「田舎で暮らすのも悪くない。いや、むしろ暮らしてみたい」と。
永住は難しいかもしれないけれど、年に3ヶ月くらい季節の良い時期だけ田舎で過ごし、残りを都会で、なんて具体的な生活を妄想してしまうほどに。
ムコさんとツマさんが住む、少し古い家も魅力的です。
古民家や平屋、縁側のある家への漠然とした憧れはありましたが、どこかおとぎ話のように感じていました。
現実は不便なことばかりで、きっと後悔するだろうと。
しかし、この物語を読んでいると、その「不便さ」すらも、暮らしの味わいとして捉えられるような気がしてくるから不思議です。
不便だからこそ、工夫が生まれ、日々の小さな出来事に喜びを感じられるのかもしれない。
ネットさえ繋がっていれば、意外と何とかなるんじゃないか。そんな風に思えてきました。
ボクたちの周りにはモノがあふれています。本当はなくても困らないものまで「ないと不便だ」という幻想を抱いているだけなのかもしれません。
この物語は、自分にとって本当に必要なものは何か、モノとの付き合い方を見つめ直すきっかけも与えてくれました。
人間もまた、自然の一部であるという気づき
『きいろいゾウ』に出てくる食べ物は、どれも本当においしそうです。
そして、物語に登場する動物たちが、みんな愛くるしい。
食べ物は自分たちで育てたり、ご近所さんからおすそ分けしてもらったり。
動物たちは、ムコさんたちが引っ越してくる前からそこに住んでいる、いわば田舎暮らしの先輩です。
翻って、ボクの普段の生活はどうでしょう。
庭に生えた雑草を目の敵にして除草剤をまき、飛んでいる虫を見れば殺虫剤を噴射する。
元々そこにあった自然を、人間の都合で力ずくで変えていくような生活です。
もちろん、人間がヒエラルキーの頂点にいるなんて思ってはいません。
でも、無意識のうちに、自然に対してふんぞり返っていたのかもしれない、とこの本を読んで気づかされました。
ムコさんとツマさんは、元からそこにある自然の中にそっと溶け込むように生きています。
人間が一番偉いなんて微塵も思っていないのです。自分たちを無理やり自然に押し込むのではなく、自分たちもまた自然を構成する一部である、という生き方。
その姿に、ボクは強く憧れました。
虫は正直苦手なので、すぐに彼らのような生活はできないでしょう。
でも、こんな風に生きられたら、もっと心は優しく、穏やかになれるんじゃないか。そんな気がしてなりません。
衝撃の後半、そして訪れる温かい結末
ここまで穏やかな話を中心に紹介してきましたが、一つだけお伝えしなければならないことがあります。
この物語、前半と後半でテイストがガラリと変わります。
読み進めるのがツラくなるような、重い展開が待っています。
知りたくなかったかもしれない、人間の暗い部分に触れることになります。
でも、どうか読むのをやめないでください。
その苦しみを乗り越えた先に、温かく、優しい光に包まれるような結末が待っています。
あのツラい時間を耐え抜いたからこそ得られる、極上のカタルシス。
ぜひ、最後まで読み通して、この感動を味わってほしいです。
映画版との比較と、おすすめの鑑賞順
『きいろいゾウ』は、宮﨑あおいさんと向井理さん主演で映画化もされています。
ボクは小説を読んだ後に映画を観ました。
もちろん、あの分厚い小説を2時間の映画に凝縮しているので、省略されているエピソードはたくさんあります。
しかし、映像化されたことで、あの美しい田舎の風景や、ムコさんとツマさんの家の温かい雰囲気に色がつき、より深く物語の世界に浸ることができました。
個人的には、まず小説を読んで物語の奥深さをじっくり味わい、その後に映画を観て、頭の中に描いていた世界を映像で確認する、という順番がおすすめです。
※映画そのものはあんまり評判が良くないっぽいです。
まとめ:あなたの人生の「お守り」になる一冊
『きいろいゾウ』は、単なる心温まる夫婦の物語ではありません。
結婚とは何か、幸せとは何か、そして、人はどう生きるべきか。
人生の根源的なテーマについて、優しく、しかし力強く問いかけてくる一冊です。
日々の生活に少し疲れてしまった人。 パートナーとの関係を見つめ直したい人。
これからの人生について、ゆっくり考えたい人。
そんなあなたの心に、この物語はそっと寄り添ってくれるはずです。
読み終えた後、きっと世界がいつもより少しだけ優しく見えることでしょう。
分厚いですが、それだけの価値は絶対にあります。
あなたの人生の「お守り」になるかもしれないこの名作を、ぜひ手に取ってみてください。
それではまた。
ありがとう!
