元気ですか〜!?
どうも、ろけねおです。
今回ご紹介いたします本は、作家で多摩大学教授でアフリカ・フランス文学翻訳家で、そして「白藍塾」塾長であらせられる樋口裕一さんの本でございます。
頭がいい人、悪い人の〈口ぐせ〉
誰しも一度は、他人から「頭がいい人だ」と思われたいと願ったことがあるのではないでしょうか。
ボク自身、その願望が非常に強い人間です。
それは裏を返せば、自分の頭の良さに自信がなく、それを見抜かれたくないという気持ちの表れでもあります。
そんな時、書店の棚で『頭がいい人、悪い人の〈口ぐせ〉』というタイトルが目に留まりました。
口ぐせという日常的な習慣に、その人の思考の質が現れる。
ならば、この本を読んで「頭がいい人」の口ぐせを真似すれば、ボクも少しは知的に見えるのではないか。
そんな淡い期待を抱いて、本書を手に取ったのです。
この記事では、ボクが本書を読んで率直に感じたこと、その内容への疑問、そして、それでもなお本書から得られた学びについてお話しします。
書籍の概要
まずは本書の基本情報です。
- 出版社: PHP研究所
- 発売日: 2006/3/1
- ページ数: 221ページ (新書)
著者の樋口裕一さんは、作家であり多摩大学の教授も務める方です。
小論文指導塾「白藍塾」の塾長としても知られ、長年、言葉や思考に関する指導に携わってこられました。
文章や話し方のプロフェッショナルによる一冊と言えるでしょう。
本書の定義に抱いた正直な違和感
本書を読み進める上で、まずボクが引っかかったのは「頭がいい人、悪い人」の定義そのものでした。
この定義がしっかりしていないと、その後の具体例がどれだけ挙げられても、どこか腑に落ちないまま読み進めることになってしまいます。
本書で「頭が悪い人の口ぐせ」として挙げられている例は、客観的に見て「感じの悪い人」や「配慮が足りない人」の言葉遣いに近いと感じました。
例えば、場の空気を読まない発言や、相手への思いやりが欠けた言葉の選択などがそれに当たります。
もちろん、他者への配慮ができない人を「頭が悪い」と表現することも可能でしょう。
しかし、世の中には意図的に空気を読まない言動をする「頭が良くて感じの悪い人」も確実に存在します。
逆に、多くの言葉が頭に浮かびすぎてしまい、うまく整理できずに話し下手になっている人を、即座に「頭が悪い」と断じてしまうのは、少し乱暴ではないかと感じました。
もし、話し下手な人がこの本を読んだら、「自分は頭が悪いのか」と落ち込んでしまうかもしれません。
それは読後感として、決して良いものとは言えないでしょう。
著者自身が、本書を読む人の気持ちをどこまで想像しているのか、少し疑問が残る部分でした。
エピソードに物足りなさを感じた理由
本書は、様々な口ぐせを持つ人物を例に挙げ、その問題点を指摘するという構成で進みます。
しかし、正直なところ、そのエピソードの数々が面白いかと問われると、首を縦に振ることはできませんでした。
他者の欠点を指摘する、いわゆる「悪口」をエンターテイメントとして成立させるには、高度なユーモアのセンスと表現技術が必要です。
残念ながら、本書のエピソードは単に「こういう人はダメだ」と指摘しているだけで、読者が笑えたり、深く納得したりするような面白さには昇華されていないように感じました。
人を評価するということは、自分がその人よりも高い視点にいると宣言するようなものです。
しかし、本書で展開される指摘は、必ずしも著者の圧倒的な知性を感じさせるものではなく、「そのくらいの悪口なら誰でも言えるのでは?」と思えてしまう瞬間もありました。
高学歴で教授も務める著者ですから、知識が豊富なことは間違いありません。
しかし、「知識の量」と、物事を多角的に捉え、他者への想像力を働かせる「頭の良さ」は、必ずしもイコールではないのかもしれない。そんなことを考えさせられました。
それでも本書を読む価値はあるのか?
ここまで批判的な内容を続けてきましたが、ではこの本は読む価値が全くないのかというと、決してそんなことはありません。
ボクは、本書を「自分の口ぐせをチェックするためのリスト」として活用することに、大きな価値があると考えています。
本書で挙げられている「頭が悪い人の口ぐせ」は、確かに無意識に使ってしまうと、人間関係に悪影響を及ぼす可能性が高いものばかりです。
- 「どうせ自分なんて…」:自己肯定感の低さを示し、聞いている相手を暗い気持ちにさせます。
- 「でも」「だって」:相手の意見をまず否定から入る姿勢は、対話を拒絶している印象を与えます。
- 「普通はこうでしょ?」:自分の価値観を一方的に押し付け、多様性を受け入れない頑固さを感じさせます。
これらの口ぐせが自分にも当てはまらないか、一つひとつ確認していく作業は非常に有益です。
自分では気づかないうちに、周りの人を不快にさせたり、自分の評価を下げてしまったりしているかもしれません。
最近、職場や学校での人間関係がギクシャクしていると感じる人は、一度本書を手に取り、自分の言葉遣いを客観的に見つめ直してみることをお勧めします。
頭の良さより「感じの良さ」を手に入れるために
樋口裕一著『頭がいい人、悪い人の〈口ぐせ〉』は、手放しで絶賛できる本ではないかもしれません。
本書が示す「頭の良し悪し」の定義には、正直なところ同意できない部分も多くありました。
しかし、本書を「コミュニケーションを円滑にするための教科書」と捉え直すと、その価値は大きく変わってきます。口ぐせを改善したからといって、IQが上がるわけではないでしょう。
ですが、周りの人から「感じの良い人」「話しやすい人」と思われる可能性は格段に高まるはずです。
本書の内容を鵜呑みにするのではなく、自分の言動を振り返るための「鏡」として使ってみる。
そうすることで、批判的な視点を持ちつつも、自分にとって有益な学びを得ることができるでしょう。
自分の話し方に少しでも不安があるのなら、この本はきっとあなたにとって、良い気づきを与えてくれる一冊になるはずです。
それではまた。
ありがとう!