元気ですか〜!?
どうも、ろけねおです。
今回ご紹介いたします本は、西内啓さんがお書きになりましたとある大ヒット作のオマージュ作品です。
コトラーが教えてくれたこと 女子大生バンドが実践したマーケティング
ベストセラーとなった『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』(通称『もしドラ』)が社会現象になったのを覚えていますか?
ボクも例に漏れず、本を購入し映画館へ足を運んだ一人です。
一つのヒット作が生まれると、必ず現れるのが「二匹目のドジョウ」を狙った作品たち。
そんな予想をしていたら、本当に出会ってしまったのが本書『コトラーが教えてくれたこと 女子大生バンドが実践したマーケティング』でした。
あまりにあからさまなタイトルと設定に「これは一体どんな本なんだ?」と逆に興味をそそられ、購入してしまいました。
読み進めてみると、あとがきで著者自らが『もしドラ』の模倣を宣言している潔さ。
その姿勢に驚きつつも、ページをめくった次第です。
本書の概要
まずは本書の基本的な情報について紹介します。
あらすじ
もし、はじめてバンドを組んだ女子大生が、マーケティングの神様と言われるフィリップ・コトラーの「マーケティングコンセプト」を学び、実践したらーー。 ソーシャル・メディアが発達した現代に適した最新のマーケティング理論を、誰も聴いてくれる人がいなかった不人気バンドの成長に合わせてライトノベル仕立てで解説する。 (Amazon商品説明より引用・再構成)
物語は、鳴かず飛ばずの女子大生バンドが、マーケティングの力で成長していく様を描いています。難解なマーケティング理論を、身近なバンド活動というテーマに落とし込むことで、初心者にも分かりやすく解説してくれる一冊です。
著者情報
- 西内 啓(にしうち・ひろむ): 1981年生まれ。東京大学医学部卒。専門知識を活かし、国内外の社会を健康にするためのプロジェクトで調査や戦略立案を担当。
- 福吉 潤(ふくよし・じゅん): 株式会社キャンサースキャン代表取締役。P&Gマーケティング本部、ハーバードビジネススクールを経て起業。
書籍情報
- 出版社: ぱる出版
- 発売日: 2010/12/7
- 単行本: 192ページ
潔いほどの「パクリ宣言」から始まる物語
本書を手に取った最大の理由は、やはり『もしドラ』を彷彿とさせる設定です。
正直、「また同じような本が出たのか」という気持ちもありましたが、ここまで清々しいと逆に気になってしまいます。
扱っているテーマが「バンド」であったことも、元バンドマンのボクの心をくすぐりました。
しかし、表紙を見て少し違和感を覚えたのです。
描かれている女の子が持っているのは、ロックバンドの象徴であるエレキギターではなく、クラシックギター。
この小さな疑問が、物語の展開に繋がっていきました。
小説としてもマーケティング本としても物足りない?
ページ数が192ページと比較的少なく、あっという間に読了できるボリュームです。
そのため、正直なところ『もしドラ』と比較すると、物語の深みやマーケティング理論の解説において、物足りなさを感じてしまいました。
マーケティングの専門家ではないので断言はできませんが、過去に読んだ数冊の入門書と比べても、情報量はかなり少ないように感じます。
本格的にマーケティングを学びたいと考えている方には、本書だけでは不十分に思えるでしょう。
また、小説としても少し物足りません。
『もしドラ』が弱小野球部を立て直すサクセスストーリーだったのに対し、本書は少し違ったアプローチで物語が展開します。
うだつの上がらないバンドがマーケティングの力で人気者になる、という王道ストーリーを期待していたボクは、少し肩透かしを食らった気分でした。
物語が冷める?都合の良すぎるメンバー構成
ボクが最も物語に乗り切れなかった原因が、そのご都合主義的な展開です。
物語の序盤、主人公の女子大生バンドはあっさりと解散してしまいます。
そして、マーケティングの知識を活かして、ゼロから実力のあるメンバーを集め直すのです。
「集客できないのはメンバーの実力不足が原因」という結論は分かります。
しかし、物語として見ると、最初から能力の高いメンバーが揃っていては、マーケティングの知識がなくても成功してしまうのではないか、という疑問が湧いてしまいます。
都合よく、主人公の周りには以下のような実力者が集まります。
- ギター(主人公): プロのクラシックギタリストを父に持ち、自身も英才教育を受けた天才。
- ベース: ジャズバーで活躍する凄腕ジャズベーシスト。
- ドラム&パーカッション: 元サッカー選手の父を持ち、幼少期からサンバに親しんできた姉妹。
- ボーカル: AKBのオーディションで最終選考まで残った経験を持つ美少女。
これだけのメンバーが簡単に集まる展開には、小説ならではのご都合主義を感じずにはいられませんでした。
なぜその選曲?スゴ腕メンバーが奏でる『乾杯』への疑問
クラシック、ジャズ、サンバ、そしてアイドルという、全く異なる音楽的背景を持つメンバーが集結した新しいバンド。
一体どんな化学反応が起きるのかと期待に胸を膨らませていました。
しかし、彼女たちが初めて演奏したのは、なんと長渕剛さんの『乾杯』でした。
もちろん名曲ですが、この多様なメンバーで演奏する曲として最適だったのかは疑問です。
正直、「ギター一本で十分では?」と思ってしまいましたし、それぞれの個性がぶつかり合うような、もっと刺激的な選曲を期待してしまいました。
唯一にして最大の収穫!ターゲット設定の重要性
ここまで厳しい意見を述べてきましたが、もちろん参考になった点もあります。
それは、マーケティングの知識を使い、「自分たちのバンドが、どんな人をターゲットに、どんな音楽を届け、どんなパフォーマンスを見せるのか」を明確にしていくプロセスです。
これこそ、ボクが若い頃にやっていたバンドに最も欠けていた視点でした。
「誰に喜んでもらいたいのか」というターゲット設定があまりにも曖昧だったのです。
ただ自分たちが格好良いと思う音楽を演奏するだけでは、聴く人の心には届かない。
プロになれなかった原因は、まさにそこにあったのだと、今になって痛感させられました。
この一点だけでも、本書を読んだ価値はあったと感じています。
マーケティングの第一歩を踏み出すきっかけに
本書は、小説としてもマーケティングの専門書としても、少し物足りない部分があるのは事実です。
しかし、全く役に立たない本というわけではありません。
- 現在バンド活動で行き詰っている人
- マーケティングに興味はあるけど、何から学べば良いか分からない人
このような方々にとって、マーケティングの考え方に触れる「最初のきっかけ」としては、非常に読みやすく、手に取りやすい一冊だと言えるでしょう。
本書が好評で続編まで出ているという事実が、それを物語っています。
この本を足がかりにして、より専門的なマーケティングの本へステップアップしていく。
そんな使い方であれば、本書はあなたの活動の大きな助けになるかもしれません。
それではまた。
ありがとう!