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【読書感想文】数学が物語になる瞬間。『フェルマーの最終定理』で知的好奇心が爆発した

元気ですか〜!?

どうも、ろけねおです。

今回ご紹介いたします本は、サイモン・シンさんがお書きになり、青木薫さんがお訳しになりましたロマンあふれる数学の物語でございます。

フェルマーの最終定理

ボクは子どもの頃に公文式の数学を習っていました。

そのおかげですっかり「自分は数学が得意なんだ」という強力な魔法にかかってしまったのです。

その魔法を解くことなく大学まで進み、結果的にあまり興味の持てない学部(機械工学)で時間を浪費するという失態を犯してしまいました。

しかし、今振り返っても、学問としての数学そのものは、やはり好きだったのだと思います。

そんなボクが、ある日偶然手にした雑誌の書評で『フェルマーの最終定理』という本に出会いました。

他にも魅力的な本は紹介されていましたが、なぜかこの一冊だけは「今すぐ買わなければならない」という抗いがたい衝動に駆られ、その場でスマートフォンを取り出しAmazonで注文していたのです。

数日後、自宅に届いたのは小さな文庫本でした。

「なんだ、文庫か」と油断したのも束の間、手に取った瞬間に伝わるずっしりとした重みと分厚さに、「こりゃヤバいな」と正直ビビりました。

読書は好きですが、長らく活字から離れていた時期の影響か、分厚い本には今でも一種の威圧感を感じてしまいます。

ましてや数学の本です。

下手をすれば、わけのわからない数式で頭をぐちゃぐちゃにされるかもしれない、という恐怖すらありました。

しかし、その不安は杞憂に終わります。

一度ページをめくり始めると、そこには最高の知的冒険が待っていました。

360年の謎に挑んだ天才たちの物語

本書は、17世紀のフランス人数学者ピエール・ド・フェルマーが、古代ギリシャの数学書『算術』の余白に書き残した、あまりにも有名なメモから始まります。

xn+yn=zn(n≥3)

「この定理に関して、私は真に驚くべき証明を見つけたが、この余白はそれを書くには狭すぎる」

この謎めいた言葉が、その後360年以上にわたって世界中の数学者を苦しめる「フェルマーの最終定理」の幕開けでした。

本書は、この数学史上最大の難問が、1995年にアンドリュー・ワイルズによって完全に証明されるまでの、壮大な知の探求を描いたノンフィクションです。

書籍情報

  • 著者: サイモン・シン
  • 翻訳: 青木 薫
  • 出版社: 新潮社
  • 発売日: 2006/5/30
  • ページ数: 495ページ(文庫版)

古代ギリシャのピタゴラスから始まり、数多の天才たちがこの定理に挑み、その知性のバトンを繋いでいく。これは、人類と数学との壮大な戦いの記録なのです。

数式が苦手でも夢中になれるストーリーテリングの魔法

読み始めてすぐに「これ、ムチャクチャおもしろいな」と感じ、もう止まりませんでした。

分厚い本ではありましたが、夢中になって読み進め、比較的短時間で読了してしまったのです。

正直に告白すると、本書に登場する数式や定理のほとんどは、数学をかじった程度のボクには何のことかサッパリわかりません。

聞いたことすらない理論も大量に出てきます。

しかし、不思議なことに、数学的な知識がほとんどなくても全く問題なく楽しめてしまうのです。

その秘密は、著者のサイモン・シンが、難解な数学理論そのものではなく、その背景にある人間ドラマや歴史的な文脈を丁寧に描いている点にあります。

複雑な数式が登場しても、それがどのような発想から生まれ、後世にどう影響を与えたのかが物語として語られるため、本書は「数学書」ではなく「人間の挑戦を描いた歴史小説」として読むことができます。

数学アレルギーがある人にこそ、この見事な構成を体験してみてほしいです。

天才たちが紡ぐ壮大な歴史スペクタクル

これは「人類対フェルマー」、あるいは「人類対数学」とでも言うべき、壮大なスペクタクルロマンです。

銃撃戦も爆発もないのに、ページをめくる手が止まらないほどの興奮がありました。

まるで『スター・ウォーズ』のような、世代を超えた壮大な戦いがそこには描かれていたのです。

オイラー、ガウス、コーシー、そして悲劇の天才ガロア。

歴史に名を刻む天才たちが次々とこの難問に立ち向かい、ある者は新たな扉を開き、ある者は志半ばで倒れていく。

その一つ一つの挑戦が無駄になることなく、360年後の最終的な証明へと繋がっていく過程は、まさに圧巻の一言です。

特に、証明を完成させたアンドリュー・ワイルズのエピソードには胸が熱くなりました。

10歳でこの問題に出会い、その証明を生涯の目標と定めた彼は、7年間も自宅の屋根裏に籠り、誰にも告げずにたった一人で研究を続けたのです。

このエピソードは、少年時代の秘密基地を思い起こさせ、挑戦する人間の孤高の姿に心を揺さぶられます。

翻訳本であることを忘れさせる自然で美しい日本語

もう一つ、本書を読んで驚いたのは、これが翻訳書であるという事実です。

ボクはこれまで、翻訳された本に対して「どうも文章が硬い」「無駄な言い回しが多くて読みにくい」といった苦手意識を持っていました。

しかし、本書にはそうした翻訳本特有の読みにくさが全くありません。

翻訳者である青木薫氏の手腕は驚異的で、原文の持つリズムや熱量を損なうことなく、極めて自然で美しい日本語で物語が紡がれていきます。

科学的な正確さと一般読者へのわかりやすさを両立させる、まさに「至高の翻訳」と言えるでしょう。

この素晴らしい翻訳があったからこそ、ボクはこれほどスムーズに物語の世界に没入できたのだと確信しています。

最高の知的好奇心を満たす、あなたにも薦めたい一冊

『フェルマーの最終定理』は、数学が好きな人はもちろん、そうでない人にも自信を持っておすすめできる傑作です。

少し知ったかぶりをして「フェルマーの最終定理がね…」なんて語れば、少しだけ知的に見えるかもしれません。

この本を読むと、数学という学問が、単なる数字や記号の羅列ではなく、人間の情熱と執念、そして知恵の結晶であることが痛いほど伝わってきます。

360年という時間をかけて、無数の天才たちがバトンを繋いできた壮大な物語。

その結末に立ち会えるというのは、本当に贅沢な読書体験でした。

もしあなたが「何か面白い本はないかな」「知的好奇心を満たしたいな」と思っているなら、ぜひ本書を手に取ってみてください。

きっと、数学という世界の新たな魅力に気づかされるはずです。

それではまた。

ありがとう!

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