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【読書感想文】四天王プロレスの栄光と影─市瀬英俊『夜の虹を架ける』を読む

元気ですか〜!?

どうも、ろけねおです。

ボクと同年代(ボクは現在53歳です)プロレスファンであれば、「四天王プロレス」という言葉に胸が熱くなるはずです。

ボクもそのひとりです。

夜の虹を架ける

今回取り上げます『夜の虹を架ける』は、90年代の全日本プロレス、特に三沢光晴さん、川田利明さん、小橋建太さん、田上明さんの四天王時代を、週刊プロレス記者だった市瀬英俊さんが振り返る一冊です。

タイトルに込められた想いと違和感

タイトルの「夜の虹を架ける」とは、ハワイの言い伝えで「夜に虹を見た者は幸せになれる」という逸話が由来。

四人のレスラーを四色の虹に例え、その戦いをリアルタイムで目撃できた我々がいかに幸福だったかを示しています。

たしかに、あの時代の全日は唯一無二の熱量がありました。

しかし読了後、ボクには“幸せ”よりも“疲労”が残りました。

読みにくい構成に感じたストレス

率直に言って、この本はとても読みにくかったです。

選手ごとに時間軸が飛び交い、同じ出来事が何度も違う視点から語られます。

「あれ、この話、さっき読んだやつじゃ?」という既視感が頻出し、テンポが悪く、集中力が削られていきました。

章立てで選手を分けるなり、出来事ごとに整理するなりすれば、もっと読みやすくなったと思います。

記憶をなぞるような書き方は、熱量は感じられても編集が追いついていない印象です。

不親切な比喩と物足りないビジュアル

文中には独特な比喩が多用されていて、これがまたボクにはしっくり来ませんでした。

「え、それ何の喩え?」と首をかしげることもしばしばで、読書のリズムを崩されました。

事実を淡々と描いてくれたほうがよかったなと思います。

そして写真。

四天王プロレスの技名がズラリと並ぶのに、肝心の写真がほぼありません。

たとえば「バックドロップドライバー」や「奈落喉輪落とし」など、文字だけで語られても想像しにくい技ばかり。

知らない読者にこそ必要な視覚情報なのに、なぜそこを手抜きしてしまったのか。

驚きの事実──週プロの“中の人”がマッチメイク?

読みづらさはさておき、衝撃のエピソードもありました。

なんと週刊プロレスの編集長だったターザン山本氏、そして本書の著者・市瀬さん自身が、全日本プロレスのマッチメイク会議に参加していたというのです。

これにはビックリ。

記事を書く記者がカードを決めていたなんて、ジャーナリズム的にはアウトじゃないですか。

ボクが当時感じていた「週プロの全日記事ってなんか薄いよな」という違和感。

その理由がまさか、取材してる側が中に入ってたからとは。

選手の心情や意味を掘ることなく、リング上の出来事をただ記述するしかなかったのでしょう。

これは本当に残念でした。

ファン投票も不正?信頼を揺るがすエピソード

週プロ主催のオールスター戦での話も、目を疑うものでした。

ファン投票によって決定した試合カードが、実際は全く違うものだったというのです。

セミリタイヤ状態の鶴田&馬場の試合が“投票1位”になり、結果がねじ曲げられたと。

「ファンとの信頼関係を大切にしている」と語っていた馬場さんですが、実際にはファンを信頼していなかったのかもしれません。

そんな出来事を知ると、信仰的に支持されていた全日本プロレスに幻滅してしまう部分もあります。

危険を美化してはいけない──四天王スタイルへの疑問

本書の終盤では、小橋建太さんが四天王プロレスについて語っています。

「危険を理由に批判されるのは違う」「プロレスの技はすべて危険」という主張も一理ありますが、ボクは納得できませんでした。

確かにリングは“非日常の舞台”ですが、だからといって命を懸ける必要はないと思っています。

プロの技術とは、いかに危険に見せて安全に落とすか。

なのに、あの頃の四天王は命を削りながら戦っていた印象です。

ブレーンバスターのような技も、昔は垂直落下式だったが、危険すぎて今の形に変わったと言われています。

それがなぜ90年代に“戻ってしまった”のか。

進化ではなく退化のようにも思えます。

三沢の言葉とオカダの選択──未来に向けた希望

本書には、三沢光晴さんの発言も引用されており、「あれほどまでにやったからこそ、ラインが見えた」という言葉が印象的でした。

今のプロレスが安全に成り立っているのは、四天王が“限界”を示したからだと。

そしてオカダ・カズチカ選手が「自分は四天王のようなプロレスはやらない」と明言しているシーンは、ボクにとって唯一の希望でした。

実際にはケニー・オメガとの試合で四天王スタイルに近いものをやっていたとも言われますが、それでも“自らは仕掛けない”という姿勢には救われました。

命を懸けなくても観客は感動できる。

今のプロレスは、あの時代の反動として成立している。

そう感じさせられた一冊でもあります。

正直なところ、表紙の川田利明選手が三沢光晴選手に仕掛けるジャーマンというのも、今ひとつピンとこないな〜と思っています。

どうせ三沢 vs 川田ならば、タイガードライバー’95のほうが四天王プロレスを象徴しているように思いました。

それではまた。

ありがとう!

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