元気ですか〜!?
どうも、ろけねおです。
今回はご紹介いたします本は、翻訳家のマッシュー・ファーゴさんがお書きになった本でございます。
空想英語読本
英語をペラペラ喋れるようになりたいとまでは思わない。
でも、映画を観るときに字幕なしでも何となくニュアンスがわかったり、ふと目にした英語の文章をさらっと読めるくらいにはなりたい。
そんな、ちょっと「ゆるい」願望、ありませんか?
ボクにはあります。
机に向かってしっかり勉強するのは正直面倒くさい。
でも、英語が全くわからないままなのも、なんだか悔しい。
そんな複雑な気持ちに、これ以上ないほどぴったりハマる本を見つけました。
それが今回紹介するMatthew Fargo(マシュー・ファーゴ)著『空想英語読本』です。
かの有名な『空想科学読本』の英語版、といった趣のタイトル。
「空想科学」というフィルターを通せば、きっと英語もスッとアタマに入ってくるんじゃないか。
そんな淡い期待を胸に、この本を手に取ったんです。
『空想英語読本』とは? 著者の視点が面白い
まずはこの本の基本情報から。 著者はマシュー・ファーゴ氏。
1979年にカリフォルニア州サンフランシスコで生まれ、オレゴン州ウィラメット大学在学中に交換留学生として来日された方です。
英米文学部と日本語学部を卒業し、ALT(外国語指導助手)として日本の中学校で教えていた経験もお持ちだとか。
なるほど、日本の文化と英語の両方に精通しているわけですね。
本書の内容は、日本の漫画、アニメ、映画、特撮などに登場するセリフや単語を「英語に訳す」あるいは「英語の視点からツッコミを入れる」というもの。
独特のユーモアと、意外な実用性(?)が特徴の一冊です。
英語学習者にはもちろん、ボクのようなオタク文化が好きな層にも広く支持されている作品です。
出版社はKADOKAWA(メディアファクトリー)で、2003年7月1日発売。
単行本で159ページと、比較的コンパクトなサイズ感なのも嬉しいポイントです。
本の構成とボクの「飛ばし読み」告白
本書はChapter1からChapter8で構成されています。目次を見るだけでもワクワクします。
- これを英語で言えますか?
- 心に残るセリフ
- 漫画のタイトル、どう訳す?
- 語源は何だろう?
- 空想科学の重要構文
- 洋画の題名、無理に訳せば?
- 空想科学的表現
- 世界観を説明しよう!
……と、ここで正直に白状します。
ボク、Chapter5、7、8を飛ばして読んでしまいました。
こんなに飛ばしたら勉強にならないじゃないか、と自分でも思います。
完全にアホでした。
反省しています。
というのも、読み始める前は「全ページ夢中になって読むぞ!」と意気込んでいたのですが、想像していた以上に「ボクの知識の範囲外」のトピックも多く、結果としてかなり飛ばし読みになってしまったんです。
これはボクの集中力と、サブカル知識の偏りの問題ですね。
ただ、逆に言えば、本書はそれだけ幅広いジャンルをカバーしているということ。
ボクのように自分のアンテナに引っかかる部分だけを「拾い読み」するだけでも、十分に楽しめる懐の深さがあるとも言えます。
マジンガーZで学ぶ「まさか」の英語表現
では、ボクが特に引き込まれた部分を紹介します。
まずは、ボクらの世代にはたまらない「マジンガーZ」で使われている英語(っぽい言葉)についての解説です。
特に衝撃的だったのが、「ブレストファイヤー」の「breast」という単語についての説明です。
「breast」は一般的に「胸」を意味しますが、本書によると、もともとは特に女性の胸の「膨らみ」を指す言葉だったそうです。
今でも、この単語は主に女性の乳房を指すニュアンスが強いとのこと。
つまり、マジンガーZの必殺武器である「ブレストファイヤー」の「breast」は、直訳すると「胸部火炎」というより、もっと生々しい「女性的な胸からの火炎」といった意味合いに聞こえてしまう可能性がある、と。
著者のマシュー氏は、ユーモアを交えてそのニュアンスの違いを解説しています。
これには「へぇ〜!」と声が出ました。
本書には、他にも胸に関する様々な英語表現が紹介されており、英語圏の表現の豊かさ(?)を嫌というほどわからせてくれます。
もう一つ驚いたのが「pilder(パイルダー)」について。
マジンガーZのコクピットである「ホバーパイルダー」。
これは当然、英語の「builder(建設者)」や「slider(滑るもの)」みたいな、何か元になる単語があるんだろうな、と思っていました。
ところが、著者が調べてみても、英語・ドイツ語・フランス語・イタリア語・スペイン語のどの主要言語にも、この「pilder」という単語は存在しなかったそうです。
つまり、あの「パイルダー」は、ほぼ日本語(造語)だった、ということです。
これは意外でした。
ちなみにプロレスには「パイルドライバー」という技があります。
アルファベットで書きますと「Pile Driver」となるのですが、これは日本語で「杭打機」のことだそうです。
で、この技は相手を逆さまにマットに突き刺す技なんですが、マジンガーZのパイルダーは少々強引に言いますとコクピットになっている部分がマジンガーZの頭部に突き刺さる様が、パイルドライバーを頂戴したプロレスラーのように見えたから、パイルドライバーを縮めて「パイルダー」にしたんじゃないか。
というのがボクの説です。
仮面ライダーのネーミングに英語的ツッコミ
続いては「仮面ライダー」シリーズで使用される英語っぽいものについて。
まずは「仮面ライダーストロンガー」。
ボクらは何の疑問も持たずに「ストロンガー」という名前だと認識しています。
しかし、著者は「stronger」は「より強い」という比較級の形容詞なので、「仮面ライダーを形容している」と捉えるのが自然だと指摘します。
その場合、「Stronger Masked Rider(より強い仮面ライダー)」と言うべきではないか、と。
いやいや、わかります。
言いたいことはわかりますが、「より強い」という意味を込めつつ、「ストロンガー」という一つの固有名詞(名前)なんですってば!と、心の中でツッコミを入れてしまいました。
この辺りの感覚の違いが面白いですね。
続いては「仮面ライダースーパー1」。
これも同様で、「Super 1」だと、「1」という数字を「Super」が形容しているように聞こえてしまう、と。
「super」には「〜の上」「〜より上位にある」という意味がありますから、「1より上」……それってつまり「2」のことかしら?と著者は続けます。
「だったら『仮面ライダー2』でいいのでは?」と。
もちろん、我々が知る通り「仮面ライダー2号」は別にいますし、ややこしいことになります。
(最近では『仮面ライダーゼロワン』に『仮面ライダーゼロツー』というライダーも出てきましたから、「号」がつかない「2」もありといえばありかもしれませんが…)
いやいや、意味的には「ぶっちぎりのナンバーワン」だから「スーパー1」なんです。
「2」ではダメなんです。
そしてこれも「スーパー1」という一つの名前なんですよ!
この辺りの「固有名詞」として受け取る日本人的感覚と、「文法」や「単語の意味」として受け取る英語的感覚の違いが、非常に興味深かったです。
ウルトラマンレオ「Mac」の意外なスラング
続いてはウルトラマンの話。
『ウルトラマンレオ』には、「Mac(Monster Attacking Crew=怪獣攻撃部隊)」という地球防衛軍的な組織が登場します。
ボクらはこれを普通に「マック」と発音しますし、Appleの「Mac」と同じ感覚です。
ところが、この「mack」という発音(スペルは違いますが)は、英語のスラングで「ナンパ師」とか「口説き文句」といった意味合いで使われることがあるそうです。
つまり、英語圏の人が聞くと、地球を守る崇高な組織の名前が、ちょっとチャラい感じに聞こえてしまうかもしれない、というのです。
どえらい名前に聞こえる可能性があるんですね…。
ボクは普段からMac(PC)を使っていますが、ボクのMacが「ナンパ師」に聞こえるとは…。
スペルも発音もほぼ同じですから、これはちょっとした衝撃でした。
映画タイトルの深すぎる意味:「ダイ・ハード」
映画のタイトルに関する解説も非常に面白かったです。
特に「なるほど!」と膝を打ったのが、ブルース・ウィリス主演の名作「ダイ・ハード(Die Hard)」です。
ボクはてっきり「死ぬほど大変(Hard)」みたいな意味かと思っていましたが、全然違いました。
diehard(名詞):頑強に抵抗するもの、なかなかくたばらない人die hard(動詞句):猛烈に死ね(命令形)、最後まで抵抗するdie-hard(形容詞):情熱的な、熱狂的な、頑固な
このように、くっつけるか離すか、ハイフンを入れるかで、意味や品詞が変わるというのです。
そして驚くべきことに、主人公ジョン・マクレーンの「なかなかくたばらない」姿、テロリストへの「猛烈に死ね」というメッセージ、彼の「情熱的(あるいは頑固)」な性格、そのどれもがこの物語にぴったり合っているんです。
これは実に上手いタイトルなんだと、改めて感心しました。
ガンダムやエヴァ…アニメ作品への英語的視点
ボクはアニメにはそこまで詳しくないので、ガンダムやエヴァンゲリオンの章は少し飛ばし気味に読んでしまったのですが、それでも興味深い指摘がいくつかありました。
例えば「機動戦士ガンダム」の「ニュータイプ(Newtype)」。
これは我々にとっては「新しい人類」を意味する固有名詞ですが、英語圏でそのまま「Newtype」と書くと、「新しい活字(フォント)」や「新しい型」という意味にも取れてしまう、という話。
また、「新世紀エヴァンゲリオン」の「使徒」。
これが英語では「Angel(天使)」と訳されています。
なぜ「使徒(Apostle)」ではないのか。
そこには神学的なニュアンスの違いや、作品の世界観を英語でどう表現するかの深い考察が隠されている、と著者は分析します。
空想科学の世界もまた、お国柄というのが色濃く出ているんですね。
英語圏の人たちがこれらの日本の作品をどう見ているのか、その視点の違いがとても興味深かったです。
文化と英語について
これまでボクが読んだものの中にも他の文化について学べる本がありました。
こちらはイギリスからやって来たご一家が日本を食べ歩き時の話を綴った一冊です。
日本人の当たり前が当たり前ではないことを思い知れます。
オススメです。
そして、英語を話せるといいことありますという本。
英語を話せることによって、世界の多くの場所で暮らしていけるので、著者の大橋巨泉さんはゴルフに適切な季節になる国を巡って暮らしているそうです。
巨泉さんには憧れていますが、英語はさっぱり喋れませんし、聞き取れません。
まとめ:英語学習の「入口」として最高の一冊
この『空想英語読本』を読んで、ボクは「ああ、こういう切り口なら楽しく英語に触れられそうだ」と素直に思いました。そして、こういうネタをきっかけに、いろんな外国の方と話してみたいとも思いました(英語はさっぱりですが)。
本書は、ガチガチの英語学習本ではありません。 懐かしのアニメや特撮を通じて、「へえ、そうなんだ!」と思える雑学がたくさん詰まった、エンターテイメント本です。
「英語をしっかり勉強したいわけじゃないけど、少しは理解できるようになりたい」。
そんな、かつてのボクのような「ゆるい」願望を持つ人にとって、これ以上ないほどぴったりの本だと思います。
特に氷河期世代や団塊ジュニア世代の方なら、取り上げられている作品群に「懐かしい!」と声を上げてしまうはず。
コーヒーでも飲みながら気楽にページをめくれば、知らず知らずのうちに英語への苦手意識が少し和らいでいるかもしれません。
完璧に読み切らなくても大丈夫。ボクのように飛ばし読みしても、気になった部分だけ拾い読みしても、十分に元は取れます。
ぜひ肩の力を抜いて、英語と日本のサブカルチャーが織りなす、面白くも奥深い関係性を楽しんでみてはいかがでしょうか。
それではまた。
ありがとう!