元気ですか〜!?
どうも、ろけねおです。
今回ご紹介いたします本は、特に読書家でなくても知っているであろう村上春樹さんの本です。
風の歌を聴け
ボクが村上春樹さんの小説に初めて触れるきっかけは、知り合いに『ダンス・ダンス・ダンス』を勧められたことでした。
「人に勧められた本はすぐに読め!」とどこかで読んだボクは、さっそく読もうと準備を始めました。
その前に、どんな本なのかをざっと調べたところ、衝撃的な一文を見つけたのです。
それは「俗に言う鼠三部作の続編」というような記述でした。
春樹作品を初めて読むのに、いきなり続編から入るのはどうなんだろう?と疑問に思ったボクは、「鼠三部作」について深掘りしてみました。
その結果、この『風の歌を聴け』が三部作の大元、つまり始まりの作品であることが判明したのです。
勧められた『ダンス・ダンス・ダンス』は、この三部作のさらに続編に当たります。
「すべてはここから始まったんだ」そう直感したボクは、勧められた本ではなく、まずは村上春樹の原点である『風の歌を聴け』から読んでみることにしたのです。
この判断は、結果的に大正解だったと感じています。
『風の歌を聴け』の基本情報と概要
『風の歌を聴け』は、1979年に発表された村上春樹さんのデビュー作です。
この作品で群像新人文学賞を受賞し、日本の文学界に新しい風を吹き込みました。
ボクが読んだのは講談社文庫版で、ページ数も168ページと非常に薄く、あっという間に読めてしまいます。
この手軽さも、村上作品に触れる最初の一歩として最適だと感じました。
物語は、1970年8月の18日間、海辺の街での出来事を「僕」の回想を通して描いています。
主な登場人物は、大学生の「僕」、裕福な家庭に生まれながらも孤独を抱える親友の「鼠」、そして「僕」が出会う左手の小指がない女の子の3人です。
「僕」は、過去に愛した3人目の女性を亡くした喪失感を抱えており、親友の「鼠」は人生や社会に対する漠然とした不満と虚無感を抱えています。
彼らは、マスターの「ジェイ」が経営する寂れたバーに入り浸り、ビールやウィスキーを飲みながら、他愛のない、あるいはシニカルな会話を繰り返します。
ストーリーらしいストーリーはほとんどなく、淡々とした日常や、若者たちの孤独や喪失感、諦めのようなものが、独特の軽快で洒脱な文体で綴られていきます。
これが、後に『1973年のピンボール』『羊をめぐる冒険』へと続く「鼠三部作」の記念すべき第1作目です。
ボクは、この小説を読んで初めて、「村上春樹の文章」**とはどういうものなのかを体感しました。
ボクが感じた『風の歌を聴け』の魅力
この小説の最大の魅力は、やはり「文体」にあると思います。
まるで洋書を翻訳したような、または外国映画のセリフのような、独特のリズムと比喩に満ちた文章は、それまでの日本の小説にはなかった新しさがあります。
最初は少し戸惑うかもしれませんが、すぐにその心地よいテンポに引き込まれてしまいました。
ボクにとって、この文章自体が、物語の舞台である「夏の海辺の街」の空気感を作り出しているように感じられました。
作中で「僕」は、文章を書くことについて、「完璧な文章などといったものは存在しない。完璧な絶望が存在しないようにね」という有名な言葉を語ります。
この一文に、この作品全体のトーンやメッセージが凝縮されている気がしました。
登場人物たちの会話も、どこか哲学的でユーモラスでありながら、同時にやるせなさや寂しさを湛えています。
「僕」と「鼠」が交わす言葉のキャッチボールは、若者が抱える空虚さや、何かに向かって走り出したいのに走り出せない時代の閉塞感を代弁しているように感じました。
物語が断片的なので、初めて読んだ時は「結局何が言いたかったんだろう?」と感じる読者もいるかもしれません。
事実、ボクも読み終えた直後はそうでした。
しかし、時間が経つにつれて、この作品が描いているのは「通り過ぎていく時間」そのものなんだと理解したのです。
何もかもが通り過ぎて、二度と戻らない。
それでも、その一瞬一瞬を生き、何かを探し求めようとする若者の姿が、この「風の歌」に託されているのかもしれません。
ビール片手に静かにこの本を読み進める時間は、ノスタルジーと新しい感覚が入り混じる、ボクにとって貴重な読書体験となりました。
読んでみて分かった「デビュー作」のすごさ
村上春樹さんの小説は、後の作品になるほど物語のスケールが大きくなり、複雑な設定やファンタジー要素が加わりますが、このデビュー作は、良い意味で素朴でストレートです。
しかし、後の作品にも通じる「井戸」「喪失」「死」「音楽」といった重要なモチーフや、「突然いなくなる女性」という展開、そして何よりも「村上春樹の文体」の原型が、すでにこの一冊の中にしっかりと詰まっています。
この薄い本が、現在の村上春樹という作家の、そして「村上文学」というジャンルの原点なのだと思うと、非常に感慨深いです。ボクのように、これから村上作品を読み始めようと思っている方には、まさに必読の書だと強くお勧めできます。
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まとめ:その風の歌は、今もどこかで鳴り響いている
『風の歌を聴け』は、青春時代の孤独と喪失感を、軽やかで洒脱な文体で描き出した、村上春樹さんの原点にして傑作です。
ボクは、勧められた『ダンス・ダンス・ダンス』ではなく、このデビュー作から読み始めたことで、村上ワールドの入り口に立つことができたと思っています。
それは、「鼠」という大切なキャラクターとの出会いであり、彼らの青春の夏を共有する特別な経験でした。
何かを探し求めているあなた、過去の喪失感を抱えているあなた。あるいは、ただ「村上春樹」という作家のすごさを知りたいあなたに、ボクはこの本を心から勧めます。
通り過ぎる風の歌は、今もどこかで鳴り響いています。その歌を、ぜひあなたも聴いてみませんか?
それではまた。
ありがとう!
