元気ですか〜!?
どうも、ろけねおです。
今回読んだ本はこちらでございます。
通天閣
普段ほとんど小説は読まないのですが、西加奈子さんの作品は読みます。
なぜなら、西加奈子さんはプロレスファンだからです。
プロレスが好きだというだけできっと自分と同じところで笑う人なんだろう、自分と同じところで泣ける人なんだろうと思えてきます。
※プロレスファンにはいろんな人がいるので、必ずしもそうはならないものだとはわかっているのですが、そう信じたいボクがいます。
そんな人が書く小説なら、きっと面白がれるはず。
期待しながら読みました。
現実との境界のない小説の世界
結論から書きますと、たいへん楽しめました。
面白ったです
大笑いするようなものではないけども、す〜っと心に染みこんでくるような面白さがありました。
ボクが小説を読んでいる時、映画を観ているような感じで物語の展開を眺めていることが多いです。
小説の世界を外から俯瞰で見ているような感じですかね。
ボクの場合は、物語に出てくるキャラクターの誰かに自分を投影して、その物語の住人になるということはあまりありません。
ところが、この小説には妙なリアリティを感じまして、今いる世界が実はそもそも小説の中の世界なんじゃないかと思わせるほど、物語の中に入り込めました。
ちなみにタイトルで分かる通り舞台は大阪の通天閣がある辺り(新世界)に設定されているのですが、その場所に縁もゆかりもありません。
※どうでもいいことですが「縁もゆかりも」全部漢字で書いてしまうと「縁も縁も」となり、わかりにくくなるのに今気が付きました。
何の関係性もない土地なのに、主人公の部屋がリアルに自分の部屋のように思えました。
それだけ見事な情景描写なのでしょう。
実際の自分の部屋とは全く違うのですが、いつも使っているような安心感さえ覚えるようになっていくのでした。
自分にとっては不思議な体験でした。
小説が好きな人にはよくあるのかも知れませんが・・・。
こうなると小説は俄然面白くなりますよね。
凄まじくリアルな人たち
実際にモデルになった人がいるのかも知れませんが、ドキュメンタリーを観ているようなリアリティがありました。
出てくるキャラクターはクセの強い人ばかりなんですが、大阪にならこの小説に出てくるような人がアッチコッチに居るに違いない、居てもなんらおかしくないと思わせるものがあります。
主人公は二人なのですが、片方はボクと同年代でして、何となく自分に似ているように思えて、さらに親近感を覚えました。
親近感が出ると一段と物語にのめり込んで行けて、主人公が味わう喜びや悲しみもまるで自分のことのように感じられるところまで来てました。
何もかも本当に起こった事を体験しているかのような、自分が小説の一部になっているような状態でした。
主人公とシンクロしたというより、主人公にスゴく近い人間として、この小説には出てこない来ないけど、ボク都合で出演しているような感覚でした。
世界も人もとにかくリアルに感じられる小説だったのです。
これが直木賞作家の文章力なのでしょうか。
見た目が汚いほうがむしろキレイ
テーマは「生きること」と「愛すること」は無条件で美しいということかと思います。
美しさを描くわけですから、普通はもっとキラキラ光っているものとして描かれるはずです。
誰が見ても美しいとわかる感じです。
だけども、「大阪」というフィルターを通すと、少しも光ってはいないし、むしろなんだか汚く見えます。
いや、実際汚いのもあります。
でも、それが美しい。
人は誰しも生きているだけで美しく、誰かを愛するだけで美しい存在なのだというのを教えてくれました。
たとえ傍から見て汚くても、そこには美しくキラキラ輝く世界があるのです。
むしろ大阪をまとってちょっと汚くしたからこそ、美しさが際立ったのかもしれませんね。
大阪が汚れているというよりは、上品さからは多少遠ざかってるということでくすんでいるという感じです。
ボクの感覚的なものですので、ちょっと伝わらないかも知れません。
ボクは大阪で育ちましたから、大阪の人間であることに対するプライドがあります。
この汚さの中の美しさが表現されたことがプライドを保ってくれたように感じて、感動できたのです。
そして、他の土地の人にもこの美しさが伝わればいいな〜と思いました。
散々笑って最後にドバっと泣かされた
大半は笑わされるのに、最後になってドドドッと感動が押し寄せてきます。
悲しい結末で、ただ悲しくて泣けた部分もあったのだけど、涙の成分のほとんどは良かった〜という感動でした。
笑って気持ちよくなり、泣いて気持ち良くなってしまいました。
ぜんぜんハッピーエンドではないのだけども、なんか良かったな〜と思わせる物語でした。
大阪人だからこそ、感動できたというところもあるでしょうから、大阪じゃない人が読んだ時どう思うのかが気になる小説ですね。
万人受けはしないかな?
ともかくボクにとっては良い物語でありました。
それではまた。
ありがとう!