元気ですか〜!?
どうも、ろけねおです。
今回は、新日本プロレスの元社長ハロルド・ジョージ・メイさんの著書『百戦錬磨』を読み終えたので、その感想をシェアしたいと思います。
百戦錬磨
最近はすっかりプロレス観戦から遠ざかっていたボクですが、内藤哲也選手の退団というニュースをきっかけに、本格的な新時代に突入する新日本プロレスをもう一度しっかり見届けようという気持ちが湧き上がっていました。
オカダ・カズチカ選手やウィル・オスプレイ選手といった絶対的な壁が去った後、新たな時代を築かなければならない選手たちに、少しばかりの同情と大きな期待を寄せていたのです。
そんなタイミングで、当時の前社長であったハロルド・メイさんが書いた本書を手に取りました。
新日本プロレスが最も熱く、大きく変わろうとしていたあの時代、メイさんがどんな思いで経営の舵を取っていたのか。
それを知ることで、当時の熱狂を再確認したかったのです。
異色の“プロ経営者”ハロルド・メイとは何者か
本書を語る上で、まず著者であるハロルド・メイ氏の驚くべき経歴に触れないわけにはいきません。
- 著者: ハロルド・ジョージ・メイ
- 経歴: 1963年オランダ生まれ。幼少期を日本で過ごし、その後インドネシア、アメリカへ。ハイネケン、ユニリーバ、サンスター、日本コカ・コーラ副社長など名だたるグローバル企業を渡り歩き、タカラトミー社長時代には業績をV字回復させ株価を4倍近くに引き上げた「プロ経営者」。その後、新日本プロレスリングの社長兼CEOに就任。メディアからも注目される異色の経営者として知られています。
その輝かしい経歴もさることながら、彼の魅力は堪能な日本語と、明るくユーモアに満ちた人柄にもあります。
本書は、そんなメイさんが様々なグローバル企業で戦い抜いてきた経験と、新日本プロレスの改革で発揮した手腕が凝縮された一冊です。
書籍情報
- 出版社: 時事通信社
- 発売日: 2019/12/17
- ページ数: 242ページ
翻訳本と見紛うほど流暢で、心に響く日本語の力
まず本書を読んで度肝を抜かれたのは、これが翻訳書ではないという事実でした。
てっきり外国人経営者の本を日本語に訳したものだとばかり思い込んでいたのです。
外国人著者の翻訳本は、どれだけ名著であっても、どこか文章に読みにくさを感じることがあります。
しかし本書にはそれが一切ありません。
それもそのはず、これはメイさん自身が日本語で書き下ろした本なのです。
その日本語は、そこらの日本人よりもよほど達者で、的確だと言っても過言ではありません。
言葉の選び方、文章のリズム、そして随所に散りばめられたユーモア。
あまりの流暢さに、「逆に母国語での家族との会話に苦労しているのでは?」と余計な心配をしてしまうほどでした。
全ての働く人へ。仕事の情熱を取り戻すためのヒント
当時50歳を過ぎた中年サラリーマンだったボクは、本書を読み、自らの仕事への姿勢がいかに甘かったかを思い知らされました。
メイさんの仕事に対する覚悟、困難に立ち向かう姿勢、そして何より人を大切にする心。
その哲学に触れ、今後の社会人生活をより充実させるための大きな活力をいただいたのです。
だからこそ、この本はこれから社会に出る若い人たちにこそ読んでほしいと感じました。
「あんな大人にはなりたくない」という反面教師は世に溢れていますが、「こんな大人になりたい」と思えるロールモデルはなかなか見つからないものです。
本書は、その貴重な道標の一つとなり得ます。
もちろん、現役の経営者の方々にも強くお勧めしたい。
「ウチの社長にも読ませて、考えを改めてほしい…」そう感じずにはいられませんでした。
もし日本の多くの経営者が本書から何かを学べば、この国はもっと元気になるのではないかとさえ思えます。
キャラクター戦略が拓く、エンターテイメントの新たな可能性
本書はビジネス哲学だけでなく、新日本プロレスの具体的な改革についても詳しく語られています。
メイさんが社長就任後、最初に着手したのが「権利関係の契約見直し」でした。
これは、バンダイにおける「ジオン公国(ガンダム)」と新日本プロレスの「ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン」を、あるいは「シャア専用ザク」と「内藤哲也」を同様に扱う、ということです。
つまり、レスラー個人やユニットを一つのキャラクターとして捉え、マーチャンダイジング(商品化)を強力に推進できる体制を整えたのです。
当時、プロレスグッズの種類が爆発的に増え、ボクが大好きな「仮面ライダー」とのコラボ商品まで発売された時は心底感動しました。
これはメイさんの戦略の賜物だったのです。
プロレスグッズと知らずに商品を手に取った人が、後からその背景を知り「一度プロレスを観てみようか」と思う。
そんなファン層の拡大戦略が、本書には具体的に記されていました。
伝統と革新―メイ氏が示した未来への羅針盤
本書を読んでいた当時、ボクは新日本プロレスの未来に大きな安心感を抱いていました。
一部のファンは「外国人社長になって新日らしさが失われるのでは」と不安視していましたが、メイさんは全く違う。
彼は、私たちが愛する新日本プロレスの本質を守りながら、全く新しい価値を創造してくれると確信できたのです。
当時、KENTA選手による内藤選手のパフォーマンス妨害に対し「WWEみたいなことをするな」という批判がありました。
しかし、そもそもアントニオ猪木さんが見せていた「一寸先はハプニング」という演出こそ、WWE的なエンターテイメントの源流ではないでしょうか。
新宿伊勢丹で敵役レスラーに襲撃させるなど、警察沙汰になるほどの過激な演出は、新日本プロレスのお家芸でもあったはずです。
メイさんは、過去の成功と失敗を学びながら、誰も見たことのない新しい新日本プロレスの世界へ我々を導いてくれる。
本書は、そう強く信じさせてくれる、ファンにとっての希望の書でもありました。
プロレスファンとビジネスマンを繋ぐ、唯一無二の良書
ハロルド・メイさんの『百戦錬磨』は、プロレスファンとビジネスマン、その両者がそれぞれの視点で深く楽しめる、類い稀な一冊です。
新日本プロレスのリングの裏側で進んでいた壮大な改革の物語であり、同時に、普遍的なビジネスの本質を教えてくれる最高の教科書でもあります。
プロレスというエンターテイメントを通じて経営戦略を学び、ビジネス書として読みながらプロレスの新たな魅力に気づかされる。
そんな二重、三重の楽しみ方ができる本書を、ぜひあなたも手に取ってみてください。
それではまた。
ありがとう!
